ホムンクルス


  『ホムンクルス』は、“アンドロイド”と共に「人造人間」と訳されますが、この二者の間には「機械工学的製法による人造人間」と「化学的製法による人造人間」という決定的な違いがあります。
  しかし、「化学的製法」と一口に言っても実際にはかなりの程度差があるため、『ホムンクルス』という言葉自体かなり広範の意味で用いられます。
  ここで、『天衣詩抄』の世界において最もオーソドックスなホムンクルスの製法をご紹介します。

  1. ある種の生きた細胞に化学的作用をくわえ、蒸留器の中に40日程度生かした状態で密封します。
  2. 1. の操作により、細胞は腐敗する部分と制動する部分とに分かれます。
  3. 最終的に、生動する部分は人間の形に似てきます。しかし、この状態ではまだ透明で実体も無いので、人間の血液で約40週間注意深く養います。特に温度管理には細心の注意をはらわなければなりません(馬の胎温程度)。
  4. こうして作られたホムンクルスは成長が無秩序なため、成年に達すると巨人になったり矮人になったりもします。

  この製法を用いれば、比較的容易にホムンクルスを製造することがいわれています。
  これに対して、現在模索されているのは「もっと純粋に化学的製法のみによって(つまり“細胞”を用いないで)ホムンクルスを作れないか?」です。こちらの方は、まだ信用に足る成功例は確認されていません。